Mrs.SASANOKI's Table ~JAPANESE FUSION DINING

第五の味覚『うま味』 と 『うま味調味料』


8月(もう4ヶ月前ですが)、日本から小包が到着。
嬉しい食材たちに同梱されていたのは・・・

Umami-3
  この本 
  「うま味」を発見した男

  読みたいと思ったときにはすでに絶版、
  日本の友人にお願いして、ネットで
  根気よく探してもらってようやく手に入り、
  海を渡って到着。

  Sweetness(甘味)・Saltiness(塩味)・
  Acidity(酸味)・Bitterness(苦味)この4つ
  の味覚の他に、人間にはもうひとつ味覚が
  あるということを発見した明治時代の化学者、
  池田菊苗のことが書かれています。 

第五の味覚、Umami(うま味)という言葉は、日本語のまま世界の共通語になりました。菊苗の発見から80年という年月を経て、ようやく世界でも認知されるようになりました。
ここでの料理教室でも、『うま味』についてのレクチャーをしたり、生徒の口からも時々『Umami』という言葉が出てきます。 日本人として、とても誇らしく思っています。 

そして池田菊苗は『味の素』が生まれるきっかけをつくった人でもあります。

今年2月、料理教室中に、ある生徒の口から出た「日本の調味料には何でも美味しく
するものが混ざっている」という言葉。 『MSG』という言葉も同時に出てきたので、きっと否定的な考えから出た言葉。 それがきっかけで、今まで何気なく使っていた顆粒や
粉末のインスタント・だしについて考えることになり、それに付随して、その他多くの便利な調味料や半加工品の成分にも、私自身が疑問を持ち始めました。
投げかけられたこの問題に何らかの結論を出したい、という思いで、食品に使われて
いる添加物について調べてみました。 同時に、私の舌は大丈夫だろうか?
添加物に侵されていないだろうか? 本物が見極められるだろうか? という不安も。

今年3月13日にブログ記事にした、『だし』と『だしの素』に悩む日々、その頃から、この課題は今年の私のテーマになりました。

池田菊苗・・・人が「旨い」と感じる正体を解明した人。 日本人の食事を豊かにしたいという思いから研究を重ね、うま味物質の結晶(グルタミン酸)を昆布から単離するのに
成功した人。 
この本を読み、池田菊苗について知ることで、今自分の中でバラバラになっている考えを線で繋ぐ、そのヒントが得られるのでは・・・と期待を持って読み始めました。

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下記2つの観点から考えが浮び上がりました。

~Ⅰ~
まず、うま味成分(グルタミン酸・イノシン酸・グアニル酸・コハク酸など)は、もともと様々な食材に存在します。 昆布以外にも、魚介類、トマトやほうれん草などの野菜、肉類、
きのこ類、チーズや味噌なの醗酵食品など、そして母乳にも。 私たち人間が初めて
口にしたグルタミン酸は母乳でしょう。

これがグルタミン酸塩(MSG)という調味料、つまり『味の素』となると、なぜマイナスの
イメージを持つのか? 人工的に製造されたものだから?
確かに人工ですが、天然原料(サトウキビ)による発酵法で製造されてます。
手軽に安価で、食べ物を美味しくします。
 
大量に摂取すると体に害があります。 それは塩や砂糖を大量に摂取したら健康を
害するのも同じですね。 ただ、塩や砂糖と違って、一定量を超えると味が変わらなく感じるため(味覚飽和)、使いすぎても気づかないという欠点はあるので、注意が必要です。 
私が気になったのは、常習性があるかもしれない、ということ。
使い続けると「ないと物足りない」と感じるようになるかも。 『旨み』を求め過ぎて、すでにうま味がある食材にも、さらにうま味調味料を足してしまう。 そうなると、素材が本来
持っている旨みに気づきにくくなります。 舌が鈍感になります。 何にでも使うのでなく、もとの味を知ってから使うかどうかの判断をする。

例えば、太陽の元で熟した採れたてのトマトはもともとうま味たっぷりの旨みだから何も調味料はいりません。 スーパーで買ってきたトマトは、素材としては上記より'味は劣りますが、味の素をひとつまみかければ美味しくなります。
天然のうま味たっぷりの素材と、人工のうま味を補足した素材、ちゃんと理解して使い
分ければいいのだと思います。 (食材本来の持ち味を知っていることがポイント)

これまで間違った使い方により問題が発生し、悪い噂が流れたことがありますが、
今もなお、MSGには拒否反応を示す人は少なくありません。
多数の科学的研究から得た結果、専門機関によって確認されているのは、一般的な
使用に関しては問題はないとのこと。 また、食品に含まれている濃度において一般的に安全であることも挙げられてます。 オーストラリア・ニュージーランド食品基準機関(FSANZ)でも、そのような報告が出てます。
まれに、MSGアレルギーの人がいるので、そういう人は何らかの反応が出るかもしれないので注意が必要です。 それは、小麦アレルギーの人がいたり、そばアレルギーの人がいるのと同じように。。。
あとは、本人の自己責任において判断するということですね。 自分の持っている
動物的感覚を研ぎ澄まして判断してください。


~Ⅱ~
もうひとつ、こちらは時代背景も含めた観点から・・・

明治時代、ドイツ留学時に(その後のイギリス滞在時にも)、日本人の体格が西洋人と
比べて貧弱であると感じた菊苗は、帰国後、日本人の粗食生活を豊かにしたい、そして体格も良くなるように、という考えのもとに研究を重ね、とうとう旨みの正体を解明し、
昆布から結晶を取り出すことに成功しました。
素晴らしい発見でした。 この時代の西洋の学者にはここまでの考えは及ばなかった
でしょう。(肉を主食とする国では、肉自体にうま味が豊富に含まれていることもあり、
食材に対する貪欲さが日本人とは異なっていたのかもしれません。)
科学的知識はなくても、日本人は経験的に、天然のうま味成分を野菜料理や豆腐料理に生かす方法を知っていました。 その日本食の伝統が、この発見に繋がったのだと
思います。

そして、昆布から抽出した成分でMSGが製造され販売されていればそれほど問題提起
されなかったかどうかはわかりませんが・・・ 実際、当初は小麦を原料として製造され
ました。(小麦から同じうま味成分が製造できるんですね)
大量の昆布を使っても微量の結晶しかつくり出せない、それでは原材料費が高すぎて、一般の主婦が買えない価格になってしまうからです。 広く流通させるためには、安価な原材料を使う必要がありました。 
『味の素』と命名されたMSGは、鈴木三郎助(鈴木製薬会社・のちの『味の素』社・社長)のもとで、工業化に成功し広く流通されていきました。 (それから昭和の時代まで、
広く普及したんですね。 私の実家にも味の素のビンが食卓に置いてありました。)

私の知る限りでは、昭和50年(1975年)ころには、日本人の食事はもう十分に豊か
だったと思います。 毎日の食卓は、ご飯と汁物、おかずが1~2品と漬物。 
学校給食だってバランスの取れた内容でした。
また、1980年代、アメリカでは、日本人の食事内容は完全なバランス食であると発表
され、日本食を見習うようにということで、そのころから和食=健康食と見られるように
なり、和食ブームが始まりました。
・・・ということは、菊苗の目的は(粗食を良くする、国民の栄養状態を良くするということ
では)、少なくとも昭和50年にはもう達成されていたはずです。 そういえば、その後、
味の素を食卓であまり使わなくなった気がします。 どこへいったのでしょう? 
それは、続いて加工食品に添加されました。 (今度は自分で調味するのではなく、無意識的に摂取する、ということになります。) 加工食品には、『アミノ酸等』と表記された
美味しくする添加物以外にも、保存させるため、色持ちをよくさせるためなど、様々な目的で様々な添加物が添加されています。 そのお陰で、手間いらずで簡単に美味しい
(と感じる)料理ができるようになったのです。 日本経済はますます成長、家庭の
お母さんたちも外で働き始めるようになった時代のニーズにピッタリだったんですね。

便利な調味料や加工食品が増え、食事の支度にかかる時間が大幅に短縮されて助かりますが、その裏側に潜む弊害も同時に考えて使うべき、と思います。 
便利さと引換えに失っているものがあるということ。
そもそも食事作りというのは、手間と時間がかかるものなのです。 そして、動物性でも植物性でも、その食材たちの命からできているのです。 その命をいただくのです。 
それが意識できれば、手をかけた料理が、もうそれだけで感謝すべきものだと自然に
思えてきます。

菊苗の目的(日本人の体格)というところで、もし反論させていただけるならば、
日本人の体格は、菊苗の時代から100年たった今でも欧米人に比べて小さいですが、
それは、何千年とかけて受け継がれた私たち農耕民族のDNAであり、古来の食習慣がそれをつくってきたのではないでしょうか。 食べ物によって急に変わるものではないし、だいいち体格を変える必要はあったのでしょうか? 体が小さいことは悪いこととは思いません。(負け惜しみではありません)
日本人の持つ繊細さ・忍耐強さ・豊かな感性・従順・勤勉・丁寧・緻密で正確、そしてその上に受け継がれた伝統や文化は、世界に誇るべきものです。 この部分においては、
他のどこにも日本人を超える民族はいないと信じてます。 体は小さくても、中身で勝負です。 

明治以降(開国後)、西洋に見習え・追いつけという精神で合理主義がもてはやされ、
それまでの和法や伝承が程度が低いと卑下された風潮があったと聞きますが、とても
残念なことです。 食の世界だけでなく、医療や建築とか様々な分野で、日本には、
他国人には真似できない独特の伝統があったのだろうと思うと。。
時代に流されて、次第にそういうものを手放してしまった・・・何てもったいない!
今後取り戻すべきは、先人の築き上げた伝統や技、サムライ魂、そしてそれを繋いでいくことではないか、と思うのです。

(話がそれましたが・・・)
この本を読んだことのある方、食文化について、添加物についてお考えのある方、
何なりとご意見を(反論があればそれも含めて)聞かせていただけたら嬉しいです。 
よろしくお願い致します。
今、私たちの目の前に立ちふさがる大きな壁に比べたら、食品添加物の問題は
微々たることかもしれないけど、軽視できることでもありません。

2月に出された宿題の答え、年を越さないうちに、まとめてみました。
(これから英語にして、生徒にも渡さなければ・・・)


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