Tea Ceremony in Japan 2017 ~新緑のお茶会~
今回の帰国が確定して最初に決まったプラン、5月のお茶会。
友人の栄子ちゃんを通じて彼女のお茶の先生が企画してくださり、心躍らせながら準備をしました。 庭園の中のお茶室とお聞きし、これは是非とも着物で出席したい!
と、NZにいながら着物の準備、帰国後に着付けレッスンと茶道の本で予習・復習。
緑濃い庭園の中のお茶室。
お稽古も兼ねたお茶会、この日お茶を点てるのは栄子ちゃんともう一人生徒さんの
新保さん。 二人とも忙しそうに水屋付近を行ったり来たり。 私はご一緒させて
いただいた他のお客様たちとしばしの間、歓談。(ここを待合というのかしら・・・) ここからは路地草履をお借りして
庭園を歩くことになります。
「準備が整いました」
とのお声がかかり・・・
お客の私たち四名、
庭園の中を通り、腰掛待合に移動。
煙草盆とその横に円座。
正客である栄子ちゃんのお父様が
重なった円座を並べてくださった
ところに先生がお見えになり、ご挨拶
さあ、ここから私たちも、お客としての立ち振る舞いのお稽古です。
この先は、一人ひとり、先生から手取り足取りのご指導を賜りました。
当日の亭主役である栄子ちゃんが水を運んで来る気配がありました。 栄子ちゃんは
蹲(つくばい)にて、その水で手を清め口を清めます。 木陰の向こうからその音が聞こえてきました。
栄子ちゃんが去っていくあたりで、正客
(栄子ちゃんのお父様)がその姿を見送りながら、
ご自分が清めに歩を進めます。 先生いわく、
前の方が清めている音を聴いて、自分が
進むタイミングを見計らうのだそうです。
流れる空気に耳を澄ませると、
木々の葉が重なる微かな音の中に、
水を使う音が心地良く聞こえました。
蹲(つくばい)では、左手・右手・口・柄を順番に
清めて、柄杓を元の位置に戻します。
(同じように次の方が続きます)
身を清めたら、いよいよ席入り。 初めて体験する『にじり口』。
お茶室特有の小さな出入口で、
高さ・幅とも70cmくらいしかありません。
体の大きな人は、入るのが大変かも・・・
にじり口は千利休の考案で、
「どんなに地位の高い人でも、ただの人に
なってから茶室に入ってほしい」とのことで、
武士も刀を許されず、頭を低くして身を屈し
(足元を見つめ)、そして入室するのだそうです。
戦乱の時代に、平和な空間を求めた証だった
のかもしれませんね。
お茶室とはそのような神聖なところなのだと
改めて実感しました。
身を屈してにじって入り、顔を上げるとその先に床が。
目の前に、今日のために作られた空間が広がりました。 床を拝見:
美術鑑賞の場であり、
亭主の心入れが
満ちる場。
掛物に、 花と花入れに、
香合に。
続いて手前座の拝見。
着席:
私は正客の隣で二番目。 上座には正客、下座には末客が座りますが、両方とも
それぞれの役目があるので慣れた方が務めます。 初心者の私はその間に座ることになりました。
主菓子: 縁高に入って運ばれてきました。
一昨年、教えていただいた縁高に入った
お菓子の取り方、その後NZで何度か復習した
甲斐あって、スムーズ!
あ、紫陽花が咲いている!
さわやかな色合いの上に
錦玉羹の小さな雨粒がポツリポツリ・・・
空模様や花が咲く情景が目に浮かびます。
懐紙に取り、しっとりと美しさを味わいました。
濃茶:
目の前の栄子ちゃんの
お点前を拝見しながら、
隣では先生の解説が
付きました。
嚙み砕いたような説明
が、私のような初心者
にはありがたく、
一層楽しめました。
まったりと濃厚な深みのひと口を
ゆっくりと味わいました。
道具の拝見: 美しい工芸品を手にとって
見ることができる、道具との一期一会。
各お道具それぞれ見るポイントなど
教えていただきました。
良いものに触れる回数が増えるにつれて、
次第にその重みがわかるときが
くるのでしょうか。
続いて干菓子:
二種類のかわいいお菓子が
お菓子鉢に。
(水色のお菓子、
上に何かついている?)
懐紙に取りわけ、
ポリポリと快い歯ざわりを楽しんで
いただきました。美味しい!
~あとで先生から解説していただきましたが~
この水色のお菓子に施されていたのは『蛍』
同時に、今日のお茶席の花についても
教えていただきました。
薄紫色のお花は『蛍袋』
蛍の夢を蛍袋に入れて、
どうぞお心に託してお持ちくださいという意。
この可憐な提灯の中で蛍が光を放っている
その様子を想像したとき、心が酔いしれました。
解説なしに、このメッセージを読み取ることができたら、なんて素敵でしょう! そして・・・
写真を撮ってみて気づきましたが、
隣のお花は紫陽花じゃないですか。
ガーデンに咲き乱れるような大きなのでなく、
ひっそりと野に咲き始めた小さな白い紫陽花。
ここに今日の主菓子と干菓子のヒント
が姿美しく仲良く存在していたのです。
最初の主菓子のときに気づいていたら、
そして蛍袋という花を知っていたら、
お干菓子を見てすぐに、この粋な仕掛けに
ピンときたはず。
知識と感性が響き合ったときに起こる無言の感動、
これこそ日本人が持合わせる美意識なのかと思いました。
薄茶:
そんな季節のメッセージを感じながら、
薄茶をいただきました。
お手前は、新保さん。
キリリと姿勢良く、それでいて柔らかなものごし、
丁寧な所作はうらやましいほど美しい。
静寂の中、茶筅の動く音に期待感が高まります。
お手前、美味しく頂戴いたしました!
道具拝見: 薄茶器(蓋を取り中の抹茶の様子も
見せていただきます)、茶杓、茶碗を順に拝見。
先生と、栄子ちゃん・新保さん・ご一緒させていただいた皆様と、
ここで和みのおしゃべりタイム。
お香を入れた香合はヨーロッパへ行かれたとき
購入された小物入れとか。 赤いふさと足が、
まるでここに飾られるためにつくられたデザイン
かと思えるほど、見事に馴染んでいます。
クリアーな質感が目にも涼しげ。
お見立て、是非参考にさせていただきたいです。
紙釜敷のきれいな薄紫色が
蛍袋の色とリンクして、
床の間にさわやかな印象を与えていました。
新緑の息吹みなぎる庭園の中、路地・待合と、自然の趣に耳を傾けたひと時、
その向こうに佇むお茶室の、光と影の織り成す舞台で、
梅雨入り間近の、季節感溢れる清清しいしつらえに囲まれて
五感を集中させて味わったお菓子とお茶。
全ては、この一服のために準備されたおもてなしの時間と空間。

終幕、再び床を拝見。 会を振り返りながら、この日の一期一会に感謝して、
また、写真撮影を特別に許可してくださいました先生の深いお心に
感謝の気持ちをこめて。